運命の推し
日向がそう言って、個別包装されているどら焼きの袋を開けた。


さっき、香奈子がコーヒーと共に持ってきてくれたものだ。


「テレビの中の人を、どうやってお祝いするのかしら?」

前から疑問だった。


「笑子ばあちゃん、それ、違うよ」

日向はどら焼きを口いっぱいに頬張りつつ言う。


「『テレビの中の人』っていうのは、私は違う気がする」


よく分からない私は、黙って日向の言うことを聞くことにした。


「優大だって、ちゃんと私たちと同じように生きているんだよ。テレビにうつることが仕事の一部としてあるだけで、おんなじように毎日、この世の中で生活している人なんだよ」


「……そうねぇ?」

私の頭はかたいらしい。
日向の言っている意味が理解できないままだ。


「『テレビの中の人』って言っちゃったら、優大が可哀想だよ。この世にいないみたい。確かにスターで、私たちの手の届かない場所にいる人だけど。でも、おんなじように生きているのに」


「……でも、お祝いしてあげたくても、手の届かない場所にいる人にどうやって?」


私の質問に、日向は何故か得意気な顔をした。


「簡単だよ!」


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