運命の推し
「今日は、みんなに聞きたいことがあるから」
と、日向は言う。
それから私の隣に座って、
「ここで食べる」
と両手を合わせた。
今夜は和食のメニューだった。
肉じゃがと、いんげん豆としょうがを炒めたもの、お漬物の2種盛り、白米とお味噌汁。
「聞きたいことって?」
香奈子が焦れた様子で、日向に聞く。
「勝也じいちゃんのこと」
そう呟いた日向は私に、
「今日話したこと、みんなに話してもいい?」
と聞いてきたので、私は頷く。
「え?『シー・ファンキーズ』の優大が、勝也じいちゃんに似てる?」
香奈子はそう言いつつ、少し吹き出した。
「こら、汚い」
そう言う美加子も、顔が笑っている。
「笑っちゃダメだよ。笑子ばあちゃんは、本当にそう思ってるんだから」
日向にたしなめられても美加子と香奈子は、
「だって……」
と、まだ笑っている。
「失礼ね、お父さんだってカッコよかったのよ」
私は少しむくれた顔になってしまう。
「でも、優大ではないでしょう!」
香奈子はケラケラ笑っている。
日向は香奈子を無視し、大真面目な顔で話し始める。
「……私、勝也じいちゃんに会ったことはないし、1枚の写真じゃ似ているか似ていないのか、本当のところは分からない気がしたんだ」