運命の推し

「いいえ。お付き合いしてくださいって言われたのは、就職してからね。おばあちゃん、近所の本屋さんで働いてたの」

「そうだったんだ?」

「その本屋さんに偶然勝也じいちゃんが来たことで思い出話に花が咲いて、それから勝也じいちゃんがお店の常連客になって……」

「おぉー!」

「お付き合いしてくださいって言われたわ。おばあちゃん、嬉しくて。しばらく夢見てるのかと思ったくらい」



お父さんがお店にくるのを、首を長くして待っていた私。

小さな恋心が膨らんでいくのが、自分でも分かっていた。




『お付き合いしてください』

そう言ったお父さんの真っ赤な顔。

今でも忘れられないわ。




「勝也じいちゃん、おばあちゃんのことが本当に好きだったんだね」


アルバムをパラパラめくりながら言った日向の言葉に、私は少し照れてしまう。

「なぁに、急に」


「写真にうつってる勝也じいちゃん、満面の笑みだよ。これ、笑子ばあちゃんが撮った写真でしょ?」

「あら、そうね、確かに私が撮ったものよ。よく分かるわね?」

「すぐ分かるし!」
日向は得意気だ。


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