運命の推し
「本当は誕生日カードを買いたかったの。でもネットで買うとママにバレるし」
香奈子と日向の約束ごとで、インターネットでの買い物は、香奈子の了承が要るらしい。
何を買ったのか把握しておきたいのだろう、とぼんやり思った。
「でも、外に買いに行けないし……」
ふいに、口から出てしまった。
「どうしてなの?」
聞いてはいけない、と思っていたのに。
「どうして、って何が?」
日向の声に棘を感じた。
「何って……」
私は口ごもってしまった。
「どうして部屋から出ないのかって聞きたいの?そんなの、笑子ばあちゃんに関係ないじゃん!!」
日向は大きな声でそう言うと、
「出てってよ!」
と私を部屋から追い出し、乱暴に部屋のドアを閉めた。
……やってしまった。
そう思った。
でも。
すぐに思い直した。
誰かが、ちゃんとあの子の話を聞くべきよ。
「そうよ、逃げてちゃダメよ」
私は自分の部屋に帰りつつ、背筋を伸ばした。
日向の様子が明らかにおかしいことで、香奈子が私に「何かあったの?」と聞いてきた。
私は、正直に話す。
みるみる内に香奈子の顔は怒りの色を濃くする。
「何してくれるのよ」
香奈子が言う。
「笑子ばあちゃんは口出ししないでよ!!何にも知らないじゃない!!」