運命の推し


「本当は誕生日カードを買いたかったの。でもネットで買うとママにバレるし」

香奈子と日向の約束ごとで、インターネットでの買い物は、香奈子の了承が要るらしい。

何を買ったのか把握しておきたいのだろう、とぼんやり思った。


「でも、外に買いに行けないし……」



ふいに、口から出てしまった。

「どうしてなの?」

聞いてはいけない、と思っていたのに。


「どうして、って何が?」
日向の声に棘を感じた。

「何って……」
私は口ごもってしまった。


「どうして部屋から出ないのかって聞きたいの?そんなの、笑子ばあちゃんに関係ないじゃん!!」


日向は大きな声でそう言うと、
「出てってよ!」
と私を部屋から追い出し、乱暴に部屋のドアを閉めた。




……やってしまった。

そう思った。


でも。

すぐに思い直した。


誰かが、ちゃんとあの子の話を聞くべきよ。



「そうよ、逃げてちゃダメよ」



私は自分の部屋に帰りつつ、背筋を伸ばした。








日向の様子が明らかにおかしいことで、香奈子が私に「何かあったの?」と聞いてきた。

私は、正直に話す。



みるみる内に香奈子の顔は怒りの色を濃くする。


「何してくれるのよ」

香奈子が言う。

「笑子ばあちゃんは口出ししないでよ!!何にも知らないじゃない!!」

< 62 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop