運命の推し
「……今日は、ごめんなさい」
私は日向に謝った。
日向は頭を振って、
「笑子ばあちゃんは悪くないのに、私こそごめんなさい」
と言った。
少し、ホッとする。
「部屋から持ってきたの」
そう言ってスマートフォンにイヤホンを接続した日向は、私にイヤホンの片方を渡す。
耳には「シー・ファンキーズ」の歌。
『星の降る夜には』が流れている。
ふたりともしばらく黙って聴いていた。
優大の優しい声に、大丈夫だよって励まされているみたい。
心強くなる。
本当に寄り添ってくれているみたいね。
曲が終わって。
日向がふいに話し始めた。
「中学の時に、ライブに行く約束をしてた友だちがいたの」
「『シー・ファンキーズ』の?」
「うん。その子も周くん推しで、気が合ったんだ。でも……」
日向の顔が曇る。
「その子の家、厳しくて。ライブに行くって言ったら反対されちゃったんだって。ライブに行けないって言われた。私はその子と行くはずだったライブに、ママと行っちゃったの」