運命の推し
日向は俯く。
「ライブに来ていた他の友だちがね、その子に話したんだ。私がママと来てたよって」
私は黙って、日向の肩を抱いた。
「その子、すっごい怒って……」
日向の声が涙声に変わる。
「……私、グループからハブられて、イジメられてたんだ」
ひっく、ひっくとしゃくりあげながら、日向は続けた。
「ママが……、未婚で私を産んだってことを、私、その子に話してたの。だって、親友だと思ってたから」
消えそうな小さな声で、日向は言った。
「でもそのことを悪意のある言葉で、教室の黒板に書かれてた。もしかしたら、ネットとか、他のところにも同じようなこと、書かれたかもしれない」
「ひどいわね」
私は泣いてはいけない、と思ってはいるものの、私も涙声になっている。
「私のせいで、ママまで傷つけられた……」
「日向のせいじゃないわ」
日向はぶんぶんと頭を振る。
この子はずっと、自分を責めているのね。
そう思うと、どうしようもなく悲しくなった。