運命の推し
私にとってお父さんのいない日々は、張りのない日々で。


ただ、生きている。



そうとしか言いようのない毎日。










帰宅すると、私は自分の部屋に向かった。

「お父さん、ただいま」


仏壇に手を合わせる。

遺影写真にうつるお父さんは67歳のまま。

「お父さんだけ若いままなのよねー」

写真に向かってひとり、しかめ面をしてみせる。





「笑子ばあちゃん帰ってるの?」

障子越しに香奈子の声が聞こえた。

そういえば、朝食の時に「有休を取った」と言っていたっけ。


病院まで香奈子に車を出してもらったら良かったかな。

もうふらつきもなくて、元気にしてるんだけど。


「今、帰ったところよ。ただいま」


私は障子を開けた。


「お茶でも淹れようか?」
と香奈子は台所に向かった。

私はあとに続く。





「今日、病院どうだったの?」

「うん、検査結果を聞くはずだったんだけど」

「だけど?」


「今度、美加子(みかこ)を連れてこいって。一緒に検査結果を聞いてほしいって」


「え!?」
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