運命の推し
入院。
何もしてなくても、ご飯は運ばれてくるし。
空調設備も整っていて、部屋は快適だし。
夜はぐっすり眠って。
朝はすっきり目覚めて。
……私、病人の自覚があんまり無いわぁ。
快適すぎて、頭の中もぼんやりしてきそう。
検査やら診察やらはあるけれど。
医師の先生や、看護師さんに全てを任せて。
私は言われた通りにするだけ。
ただ退屈なのは、お見舞いに来てくれた美加子や香奈子が帰ってしまうと、話し相手がいないことね。
6人部屋にいるけれど。
私は他の人と今のところ、話していない。
ベッド周りのカーテンも閉めっぱなしにしている。
入院して、何日が経ったかしら。
夜。
ぼんやりとベッドの中で考えていた。
……お父さん、私とあの世で会ったら怒るかしら。
孫よりも若い男の子に夢中になっちゃって。
でも、お父さんなら。
きっと許してくれるわよね?
分かってくれるわよね?
優大は。
私が死んでも、優大の世界に変化なんて無いのよね。
いつもと変わらないわよね。
だって。