運命の推し
リビングで。
美加子が用意してくれたお茶を飲んだ。
「優大ね、さっきSNS更新してたよ」
あとで見ようね、と日向。
なんだかつらそうな顔をしている。
「あら、どうしたの?浮かない顔して」
美加子も不思議に思ったのか、日向に尋ねる。
「うーん……」
日向は少し考えて、話し始めた。
「優大ね、本当は弟さんがいるんだって」
……「本当は」?
「3つか4つ年下の弟さんが、優大が高校生の時に亡くなってるんだって。ずっとそのことは非公表にしていたらしいの」
「あら……」
思いがけない衝撃的な話に、言葉が続かない。
「何年か前に『シー・ファンキーズ』のファンの子が、優大に手紙書いて自殺しちゃった事件があったでしょう?」
初耳だった。
「そんなことって……」
絶句する私の隣で、美加子は「あったかもしれないわね」と遠い目をした。
「あの時、ニュースとかで騒がれてたよ」
そう言って、日向は続ける。
「あの事件があって、自分の命を大切にしてほしいって優大は強く思ったから、『星の降る夜には』を作詞したんだって。でもあの曲を発表することにためらいもあったらしくて」