運命の推し
「え?」

日向の目が丸く大きくなる。

「笑子ばあちゃんって……」

「なぁに?」

「わりと、予想外のこと言ったりするよね」

私はふふふっと笑う。

「日向、人生はいつだって思いもよらないことで溢れているのよ」


「何それ……?」


「予想外でも楽しめばいいってこと。予想よりほんの少し違う展開に、心躍ることだってあるわ」


「そう、かなぁ?」


「予想通りに生きなくてもいいの。予想と違っていても、いいの。振り返った時に笑顔になれる人生を歩みなさい」


そうよ。

つらくても。

悲しくても。

振り返った時に笑えるなら、いいじゃない。


きっとそうなれるように努力することが、生きるってことだと思うわ。



「訳が分からないんだけど」

日向はなんとも言えない顔で、
「再生するからねー」
とリモコンを操作している。





優大へのファンレターを、書き直そう。

「シー・ファンキーズ」のミュージック・ビデオを観ながらそう思った。


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