運命の推し
「おばあちゃん、ぼんやりしてたから。しっかり聞いてくれる人がいないとダメって思われたのかしら」

私はため息をつく。


香奈子は黙ったままだ。


「香奈子?」


「え?あ、ううん。まぁ、そうかもねー。お母さんに来てもらったら、まぁ、安心じゃない?」


香奈子は早口にそう言って、淹れたお茶を飲み干した。



日向(ひなた)は?」

私は香奈子にそれとなく聞く。


「部屋にいると思うよ」

香奈子も何でもないふうに答える。


日向は、私のひ孫で。

香奈子のひとり娘。


いつからか、日向は部屋から出てこなくなった。



いわゆる、ひきこもりだ。





「笑子ばあちゃん、今日は病院で疲れたでしょ。お昼は?食べた?」

香奈子は話題を変えた。


「まだなのよ。適当に何か作るわ」


私もそれ以上、日向の話はしなかった。


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