運命の推し
第7話
ケンカ
ファンレター。
葉書にすらすら書けたわ。
入院中に書いたファンレターは、かなりの大作だったけれど。
今度は葉書1枚に想いをのせた。
翌朝。
「郵便ポストに投函しなくちゃね」
葉書を見つめていると、ある考えが浮かんだ。
「日向」
私は、日向の部屋のドアをノックする。
日向は顔を見せてくれた。
朝の7時半。
まだ部屋の中で朝ごはんを食べていたらしく、口がもごもご動いている。
「おばあちゃんと一緒に、これを郵便ポストまで投函しに行かない?」
その提案に。
日向の顔が一気に曇る。
1番近い郵便ポストは、徒歩6分くらいの場所にある。
ちっとも外に出ていない日向にとって、それは大冒険だろう。
だけど。
私は日向に、勇気を出してほしかった。
いつだったか、私の部屋に来てくれた時みたいに。
リビングで、家族みんなで夕食を食べた時みたいに。
「いやっ……!」
日向は部屋のドアにしがみつく。
「怖いもん……!」
涙を流している。
香奈子がリビングからかけ寄ってきた。
「何なの!?」
「日向に外に出るように言っただけよ」
私はわざと、何でもないふうに説明した。
「もう!この間から何なの!!日向のこと、こんなに怖がらせて!!笑子ばあちゃんはもう、日向に近づかないでよ!!」
香奈子が日向を抱きしめながら、私を振り返って睨む。