運命の推し
夕食時。
ダイニングテーブルに、家族が集まった。
……と、言っても全員じゃない。
日向はダイニングには来ないから。
いつも部屋まで香奈子が食事を運んでいる。
今日は香奈子がハンバーグを作ってくれた。
赤いケチャップが、とろりとハンバーグの上を滑っていく。
「えっ!?」
娘の美加子がハンバーグを咀嚼しつつ、驚いた目で私を見ている。
「わ、分かった。一緒に行くわ。それで、聞くわ。検査結果」
何故かうろたえている様子。
「私も行こうか?お母さんと笑子ばあちゃんだけで大丈夫?」
香奈子がお箸を置いて、美加子に言う。
「でも、あんた仕事は?」
「なんとかするから」
ふたりは相談し始めた。
あれ?
ぼんやりしていたことを怒られると思ったんだけど。
これって。
「検査結果、良くないのかしら」
私はふたりを交互に見る。
娘と孫は、目を大きく見開いた。
……あぁ、そうなのね。
「……まだ分からないじゃない!」
香奈子が少し声を張った。
「そうよ、母さん!」
美加子も慌てて笑顔を作る。
「いいのよぅ、別に」