ほら、やっぱり愛してる . 〜 ヤクザの彼と私の物語 〜
消えない過去
オールバックで綺麗な顔立ち。
切れ長の目にメガネとタバコが良く似合う 。
第一印象はそんな感じ 。
『 お前 、 名前は ? 』
この声 、 さっき助けてくれた人 ??
私は彼女の腕を離して 頭を下げた。
「 小林愛莉 です 。 あの 、 さっきは ありが… 」 『 小林 ? おい 、 ほんとにこいつか ? 』
私の感謝の言葉を無視して 周りの人に確認をとっていた 。
〔 間違いありません 。 小林は 母親の旧姓 です 。〕
そばにいた 男の人が 答えた 。
そうか 、 とまた私をみて
『 愛莉 、お前9歳までの記憶が無いらしいな 。』
唐突に名前で呼ばれてびっくりしたが
それは置いといて、記憶が無いことをなんで知ってるの ?
『 お前の親父 、 前組長から話は聞いてる 』
「 私のお父さんは私が生まれる前に … 」
『 …そういうことになってんだな 。』
「 あの 、どういう事ですか ? 」
兄貴 と呼ばれるその人はかけていたメガネを外し 、 話を続けた。
『 昨日灰原組の組長が銃殺された事件 。 』
「 あ 、 ニュースで 、 」
『 殺された組長は俺らの頭だ 。 』
「 え? 、じゃあ ここは 」
[ 僕らのテリトリー 。 言ったでしょ ? ]
隣にいた 東雲さん が 答えてくれた。
『 それで殺された組長は 、お前の父親でもある 。 』
と引き出しから写真を取りだした。
男の人と女の人、女の子に男の子?
これは … 家族4人の集合写真 、 ?
「 え 、 これって 」
仲睦まじい写真の中に見覚えのある顔があった 。
スカートのポケットからスマホを取りだしてロック画面と見比べる 。
『 お前とお前の母親 それに 、父親と兄貴 』
彼は指を指し 、 覚えてねえのか ? と聞く 。
「 分からない 。 憶えてない 、っ 。 」
この写真の中の男の人が、昨日殺されたって言うこと ?
もし本当に私の父なら 、 …私は 、 私は 、
この人達に合わせる顔がない 。
『 …おい。おめえら一旦外でとけ 』
掛け声と同時に複数の足音が部屋から出ていった。