ほら、やっぱり愛してる . 〜 ヤクザの彼と私の物語 〜
愛莉 side
翌朝 26日 8時
〔 昨夜午前2時頃、灰原組 組長が銃殺されるという事件が起きました。犯人は未だ逃走中、敵組織の逢坂組による犯行の可能性も視野に入れ捜査しています。 〕
「 わ、物騒な事件 」
朝食のパンをかじりつつ 、 昨夜? 今日? 起きたヤクザの抗争の事件のニュースを 見ていた。
ニュースによれば打たれたのは ヤクザの組長で 即死だったとのこと 。
なんで人って殺しあおうとするの ?
平和に解決できないの ?
「 …意味わかんない 」
自然と出るため息に嫌気が差した。
テレビを消して スマホに目をやる
ロック画面には 私とママらしき人が笑っている写真を選んだ。
母はもう居ない。
9年前 、私を庇い死んだ "らしい"。
私を引き取ろうとする人もいなく 、高校まで施設で暮らし 、高校は寮のある学校に進学して、 今は母の保険金で1人生活している 。
今は3月 。 卒業式も終わり 、特にやりたいこともないので 就職することにした 。
父には1度もあったことがない。父は私が産まれる前に死んだ"らしい"。
母のお葬式の時 、 親戚のおじさんから聞いた 。
女手一つで育ててくれた母はいつも笑顔で優しく芯のある強いひとだった "らしい" 。
…なんで"らしい"なのかって?
私の中に 母の記憶がなくなったから 。
お医者さんが 9年前の事故の後遺症 だって 。いつ思い出すかも分からない 。 漫画みたいでしょ ?? 笑
この写真に写ってる人が母だと言う確証も私だという確証もない。
ただ、信じてみたいだけ。
この家には私1人。 寂しくないなんて言わないけどもう慣れた 。
「 よし、洗濯物 干して 掃除だ掃除 ! 」
食器を片付け 洗濯機のある脱衣所に向かった 。
ピンポーン
「?はーい」
滅多にない呼び鈴に
インターホンをちゃんと確認しないで 扉を開けてしまった 。
今思えば それが始まりだった 。
私が今朝のニュースに大きく関係しているなんて 、思ってもみなかったんだ 。
「 っ!? 」
扉を開けた瞬間 ハンカチで口と鼻をおおわれ
そのまま意識を失った 。