青、こっち向いて。
自覚したサマーシャワー
翌日、私はいつも通りの時間に家を出て、いつも通り一番乗りで教室に入った。
日課である窓拭きを終えて、空気を入れ替えようと窓を開けたとき、彼は来た。
「おはよ」
耳を震わす低い声に、私の心臓は大きく飛び跳ねた。
振り返ると、今日も無造作にセットされた赤が朝日に照らされてキラキラと輝いている。
「おはよう、あの、昨日はありがとう」
朝、城田くんがきたらもう一度お礼を言おうと決めてた。
城田くんは不意を突かれたような顔をしてから、机に置いてあった本を手に取る。
「…昨日」
「え?」
それ、どう言う表情??
むず痒い、気まずい、恥ずかしい、そんな感情を混ぜたような表情した城田くんがぼそっとこぼす。
「勝手に“ひとの女”とか言って、俺の彼女みたいな扱いしてスミマセンでした」
「…あ、あーっ、言ってた、ね。確かに。うん。大丈夫、あの、私も、私みたいなのを彼女って周りに思わせてごめんね」
「なんで久原さんが謝ってんの?」
私も、よくわからない。
曖昧に力なく笑う。
私の笑顔をどう受け取ったのか、城田くんは黙ったまま、カバンを置いて本を片手に教室を出て行ってしまった。
あ、行っちゃった…。
本当は、もう少しお話ししたかったな。
誰もいない教室で、ポツンと取り残された私は、濡れた雑巾を片手に机を拭き始めた