Chat Noir -黒猫と私- バイオハザー度Max- Deux(2nd)
その手を途中で止めて
「てか一丁前に“男女の仲”とか、あいつには早すぎる言葉だけど」
と私に笑いかける。
私は曖昧に笑みを返し、空になったグラスをミケネコお父様はそっと取り上げ
「何か飲む?新しいの作るよ」といつもの穏やかな微笑み。
その笑みに気が緩んで―――
今日一日張り詰めていた何かが途切れた。
「私……私は―――まだ倭人のことが好きです。
本当にごめんなさい」
失恋で人前で泣くのはかっこわるいと思ってたのに、一番涙を見せちゃいけない人の前で涙腺はあっけなく壊れ
涙はあとからあとからとめどなく落ちる。
マルガリータのグラスの淵にくっついた塩と同じ味の涙が流れ、頬を伝い唇に流れ込んできた。
こんなときにも思う。
ああ、やっぱり店長の作るお酒は本当においしい、って。
きっと店長の優しさがそのままカクテルに注がれてるんだ、って。
「……ごめんなさ…」
ひたすらに謝る私の言葉をさえぎり、
「謝らないでよ。だってきっと誰も―――悪くない」
ミケネコお父様は私の髪をそっと撫で、
「新しいのを作ろう。何が良い?
今日は僕のおごりだからたくさん飲んでいって」
眉を下げて微笑んでくれた。