Chat Noir -黒猫と私- バイオハザー度Max- Deux(2nd)
そのあとはくだらない話でミケネコお父様は私を笑わせてくれた。
酒の力もあってか、くだけた雰囲気の中
何杯目かのカクテルを飲み干して、私たちはカウンターの席からお店のソファ席へと移動して二人並んで座ることにした。
ミケネコお父様のグラスはショットグラスで、中にはテキーラが入ってる。
「ねぇ、朝都ちゃん~、いきなり辞めちゃうんじゃなくて、一ヶ月間の休職ってことでどうだろう?」
ソファの背もたれに背を深く預け、なっがい足を組みながらソファの背に腕を乗せてるミケネコお父様。
私の背中にミケネコお父様の腕があるときんちょー……
………しないな。
だって店長だもん。
黒猫とは別れたし、私たちは元から店長と従業員って関係。店長はお店の女の子に手を出す人じゃないって分かりきってるし、
今までセクハラなんてされたこともないし、聞いたこともない。
私もソファの背に深く背を預けてウォッカトニックのグラスを両手で包みながら天井を見上げた。
「お言葉はありがたいんですが。
もう戻れるとは思えないし…」
戻れるものなら戻りたい。
やり直せるならやり直したい。
でもカリンちゃんがいる限り、それは無理だよ。
戻ったらまたカリンちゃんの具合が悪くなっちゃうだろうし。
「そんなこと言わないでよ~、やっと倭人と気が合う家庭教師見つけたんだから~」
ミケネコお父様は冗談ぽくスリスリと私の頭にすりよってくる。
珍しい。だいぶ酔ってるな。
お父様の髪質とかはやっぱり黒猫のそれと似ていて、一部分だけきれいに染め上げられた赤茶の髪が
だめだ…私にはミケネコに擦り寄られてるとしか見えないよ。
甘えん坊の大きなネコ。
私は大人しくされるがまま。
「ありがたいお話しですが…」もう一度断ろうとすると
すぐ間近で迫ったお父様は真剣なまなざしで
表情で――――
「通常のお給料の八割は出すよ?」
指でマルを作り円マーク。
「マジすか¥¥」