Chat Noir -黒猫と私- バイオハザー度Max- Deux(2nd)
記憶の最後に聞いた言葉。
『朝都、好きだ―――』
あれは……どういう意味なんだろうか…
だってお父様にはペルシャ砂糖さんて言う婚約者が居るんだよ!
第一、こんな小娘相手にしないって!
必死に言い聞かせるも、
現にこうしてお父様のお部屋だと思われる部屋に寝かされてたわけだし。
ギャァアアア!
私は何てことを!
一人焦っていると、
「………ん」
お父様が小さく声を漏らして寝返りを打った。
気になってそぉっとブランケットの中をのぞくと、
ほっ。ちゃんと服着てる。
つまりそれ以上のことは何もなかったと思っていいのね。
ミケネコお父様は寝返りを打ってこちら側に身を返し窮屈そうに身をよじりながらも起きる気配はない。
こうやって見ると、寝顔も黒猫に似てる―――
長いまつげを伏せて無邪気な少年のようなあどけない寝顔。
唯一違う彼の一部赤茶に染められた髪をそっと撫でると
「紗依――――……」
寝言だろうか、お父様は一言呟き、閉じた目から一粒の涙が零れ落ちた。
サエ―――…
それは黒猫の死んだお母さんの名だ。