Chat Noir -黒猫と私- バイオハザー度Max- Deux(2nd)
「まぁ黒猫くんのはマザコンとかじゃないだろうけど。
だってあの子の小さい頃に亡くなってるんでしょ、お母様」
涼子の言葉に私はこくこく、大きく頷いた。
「大体あの子が『ママ~』とか言ってるの想像できない」
いや、私だってそれは想像できないよ。
「そうゆう溝口さんはどーなのよ。男はみんなマザコンだって言うんなら溝口さんだって」
私が口を尖らせると
「やっぱり母親には頭が上がらないみたいよ?
たまに電話掛かってくるけど、もうたじたじ。
最近知ったけど、お義母さま京都の老舗和菓子屋さんの女将だったんだって!
『正月には彼女連れてくさかい』って」
涼子は溝口さんの口真似をして真剣。
知らなかった。きれいな標準語だからこっちの人かと思ってたけど。
「てか涼子……連れてくって、ご両親に紹介!?
うそっ!凄いじゃん!」
それって結婚前提に!ってことじゃん。
「凄くないよ~!!今から緊張だよ!お正月までまだ一ヶ月もあるのに」
涼子は参考書をテーブルに放り投げてテーブルに突っ伏した。
私もミケネコお父様に紹介してもらうときはきんちょーしたしな。
「だってこのままいけば、私が和菓子屋の女将だよ??和菓子は好きだけど……研究の方がもっと好きだし…」
「あんたも院生で残るもんね。ま、深く考えずに挨拶だけしてこれば?
呼ばれるうちが華だよ」
今度は私が人ごとみたいに涼子の肩をぽんぽん。
「まぁ私の方はいいとしてー…あんた、どうするの?お父様の提案通り休職するの?」
涼子がうつろな目を上げてきて、私は首を横に振った。
「戻るつもりもないのに、気だけ持たせちゃ悪いよ」
ちゃんと断るつもりでもう一度お父様に会いに行こう。
「じゃぁ本当に本当に、これでお別れなのね」
涼子が少しだけ悲しそうな顔をして私を見上げて、
「そうするしか―――ないよ」
私はまずいコーヒーを飲み干した。