Chat Noir -黒猫と私- バイオハザー度Max- Deux(2nd)
――――…次の日。
私はその日の講義を終えて、きっちり研究室に顔を出し
自分の研究をし終えても、まっすぐうちに帰る気になれなかった。
かと言ってマウスに24時間張り付いている気力も沸かず、
結局
「いらっしゃいませ~」
前のバイト先まで来てしまった。
出迎えてくれたのはミケネコお父様。今日もギャルソン風の制服がキマってる。
「朝都ちゃん……」
昨日の今日でキマヅイ…
酔っ払って迷惑掛けたうえ、盛大な勘違いでお父様を攻めちゃったから。
でも他に時間を潰せるところなんて思い浮かばなくて、
何となく……ここが私の“帰れる場所”な気がしたから来ちゃった。
「もしかして…強請に来た…?セクハラで訴える前に取るだけ取ろうってこと??」
お父様は苦笑いで、若干引き腰。
誰が元カレのお父様を強請にわざわざ来ますかっての。
てかそこまで金の亡者じゃないし。
「あれはセクハラの内に入りません。私もお父様にひどいこと言ったのでおあいこです。
お互い水に流しましょう」
大人ぶって言ってみたけど、私はお父様の放ったあの寝言が耳から離れない。
『紗依――――……』
お父様はまだ黒猫のお母さんサエさんのことを―――忘れられないのだろうか。
それとも忘れたくない?
どっちなんだろう。
私は肩に掛かった髪の先を手にとってそっと匂いをかいでみた。
私が使っているシャンプーの香りがして、それはみずみずしい華の香りだった。