触れないで、杏里先輩!
「どういたしまして」

こんな面倒な私を守ってくれるなんて、北川君はなんて優しい人なんだろうか……




鞄を抱きしめて俯き続けること十分、N駅に着くと予想通り車両は半分以下になり、北川は空席を確認すると先程座っていた座席に戻った。


「今みたいな状況で通学は大丈夫なの?」

北川君は心配そうな瞳を私に向けている。

「朝は早くに、乗ってるから、何とか……。か、帰りは、人が朝よりはいるから、が、我慢してるしかないけど……」

これは自分で何とかするしかない。
男性に触られて失神する体質を早く治さないと、と改めて思った。

「坂井さんていつも何時の電車に乗ってる?」

「え、えと、六時十五分です……」

「じゃあ俺もその時間に乗るよ。一緒に行こう」

「えっ!?」

まさかの提案に思わず大きな声が出る。
< 132 / 239 >

この作品をシェア

pagetop