触れないで、杏里先輩!
「あ、そうだ。何かあった時のために連絡先交換しよう」

確かに待ち合わせをするならしておかないといけないな。
だって風邪をひいて突然休むことになって、待ってくれていたら大変だもんね。

高校生になって買ってもらった携帯。
私のアドレス帳は十件も登録されていないし、五月に入るまでは男子のものはお父さんしかなかった。
まさか今月、男の子二人と携帯番号を交換することになるとは。

携帯番号を交換し終えた時、私の家の最寄駅に到着するアナウンスが流れた。
電車が停車し、北川君と一緒に降りると、七メートル程先のホームには丁度やってきたM駅に戻る電車。

「タイミング抜群。乗るね、バイバイ」

忙しそうに言いながら北川君は開いた扉へと走って行って。

最後にお礼をもう一度伝えたい。

そう思った私は電車に既に乗り込んだ北川君を追い掛ける。
そんな私に振り返った北川君が気付くと、私に手を振った。

「また明日ね。バイバイ」

「あ、と、きょ」
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