触れないで、杏里先輩!
玄関の鍵を開け、中に入ると携帯を取り出す。
杏里先輩と出会ってから、家に着くと靴を脱ぐよりもまず携帯を弄るのが日課になった。
杏里先輩に帰宅報告するためだ。

『今帰りました。今日は北川君が駅まで送ってくれたので大丈夫です。それと明日の朝から一緒に学校に行くことになりました。だから私のことは心配しないで下さいね。』

杏里先輩に北川君のことを報告した。
北川君と一緒に行けば、杏里先輩も安心だと思うし。
だって杏里先輩は毎回帰宅報告してというくらい心配性だから。

送信ボタンを押すとローファーを脱ぐ。

「ただ『ブブブブブ』

ただいまと言おうとしたら、手に持ったままの携帯が震えて。
驚きながら画面をみると『杏里先輩 着信』の文字と震え続ける携帯。

杏里先輩からの電話は初めてだ。
何かあったのかな?
用件が見当もつかないが、とりあえず電話に出よう。

「はい、もしもしっ」

『北川君て、美桜のクラスメイトの子だよね?』
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