触れないで、杏里先輩!
『ごめん……俺が悪い』

いつもの優しい声の杏里先輩に戻ってくれた。

「分かって頂ければ良いんです」

私は胸を撫で下ろす。

『今日はずっとヘアピン着けててくれた?』

「勿論です!北川君も可愛いって言ってました!」

『ふーん……』

面白くなさそうな杏里先輩の返し。

「明日も着けますっ、毎日着けます!ありがとうございました、杏里先輩!」

マズい空気が漂い始めたような気がして、焦った私は言葉を付け加えた。

『気に入ってもらえて嬉しい』

トーンが明るくなって安心した。

北川君の名前は杏里先輩にはタブーなのかもしれない。
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