触れないで、杏里先輩!
近くから突然聞こえた亜季ちゃんじゃない低い声に驚いて、私は勢いよく振り返った。
だってこの学校で私を『美桜』と呼ぶのは亜季ちゃんだけだから。

真横には何故か笑顔の杏里先輩が立っていた。
罰ゲームだったと思うことにした私は亜季ちゃんと話していたらスッカリ杏里先輩の事なんて忘れていたのに。
私は驚くしかない。

「な、何しに来たんですか!?」

驚きすぎて声が無駄に大きくなる。

「逃げちゃったから、返事を聞こうと思って。探したよ」

この高校は一学年は六クラスある。
私のクラスは一年六組で四階の一番端にある。
何学年から攻めたかは分からないが、クラスがある二階から順番に全クラス回ったのだろうか。

「美桜?聞いてる?」

動けないでいた私に笑顔で問い掛けてきた先輩。

今、私の名前を呼んだよね?

「名前をどうやって知って!?」

「どうやってだろうね?」

こっちが訊いたのに、笑顔で首を少し傾げて疑問系で返された。
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