触れないで、杏里先輩!
少し話していると電話の向こうからチャイムが聞こえてきたので電話を切った。


「キャー!杏里君と付き合ってたのねー!」

突然聞こえてきた金切り声に思わず耳を塞いだ。

リビングの扉を見ると少し開いていて、そこからこっそりと覗いていたお母さんが居た。
どうやら今の会話を盗み聞きしていたらしい。

それよりも何故皆そこに繋げたがるの。

「違うよ。杏里先輩は私を心配してくれてるだけ」

私はローファーを脱いで玄関に上がる。

「何で?」

突っ込まれて言葉に詰まる。

だってお母さんには痴漢にあったことなんて話したことがない。

「何でも良いの!それよりお腹空いた!」

私は強引に話を終わらせた。
でもお腹が空いたのは本当だ。
もう昼の一時を過ぎている。

「仲良しさんなら写真撮ってきてよー!どんなイケメンになってるか見たーい!」

だが母は食い下がらない。
それどころか、変なお願いを頼んできた。
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