触れないで、杏里先輩!
「無理。それよりご飯」

面倒な母は無視するに限る。と、お母さんの横を通ろうとした。

「あ、美桜って今月漫画買ってお金無いんじゃない?撮ってきてくれたら臨時ボーナスを与えてあげようではないか」

あからさまにわざとらしいトーンだが、足がピタッと止まる。

男性恐怖症のせいで、アルバイトすら出来ない。
私の使えるお金は毎月貰えるお小遣いの三千円のみ。
ジュースとお菓子と漫画と文房具でいつもあっという間に消える。


「三千円でどう?」

再び聞こえてきた悪魔の囁きに、ゴクリと喉が鳴った。
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