触れないで、杏里先輩!
どうすれば杏里先輩は分かってくれるの?

オロオロ視線を彷徨わせて困っていたら、


「ごめん」

杏里先輩が突然私に謝った。

驚いて顔を上げると、情けなく眉毛を下げている苦笑いの杏里先輩と目が合った。

「もう言わない。美桜を困らせてるだけだから」

何で納得してくれたかは分からないけれど。

「今日もヘアピン着けてくれてありがとう」

先程とは違い、柔らかく微笑まれたら、私の心臓は飛び跳ねた。

「お、お礼を言うのは、私です……」

杏里先輩を直視出来なくて、視線がまた泳ぐ。
免疫力ゼロの私には杏里先輩の笑顔はキラキラしすぎて心臓に悪すぎる。

「さ、美桜の教室行こうか」

「はいーーあっ!」

返事をした時、思い出した。
足を思わず止めた私に杏里先輩は振り返り、「どうした?」と問い掛ける。

「あの、今日は折り行って杏里先輩にお願いがありまして!教室にまず行きましょう!」
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