触れないで、杏里先輩!
「で、何だった?」

誰も居ない静かな教室に着き、私が鞄を自分の席に掛けると私のお願いが気になっていたようで、前の席に腰掛けた杏里先輩は早速訊ねてきた。

「写真撮らせて下さいっ!」

私は座る前に頭を下げてお願いした。
頭上に「べつに良いけど」と聞こえてきて、私はガバッと頭を上げて「ありがとうございます!」と返し、早速撮るべく鞄の中の携帯を取り出す。

「何で俺の写真撮りたいの?」

「お母さんに頼まれました!早速撮らして下さい!」

報酬のことは黙っておこう。
だって杏里先輩を売る形になってしまうから罪悪感を感じるから。
それならやらなきゃ良いが、アルバイトも出来ない私には三千円は喉から手が出る程欲しい。
ごめんね、杏里先輩!と心の中で謝罪しながら私は携帯のロックを解除し、カメラのアプリを起動させると杏里先輩を画面の中に入れた。

「では早速、はい、チーズ」

パシャっと音と同時に画面が真っ暗になった。
不思議に思い、画面から視線を外すと、杏里先輩の手がいつの間に携帯の裏側にくっついていた。

そりゃ画面は真っ暗だ。
でも、
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