触れないで、杏里先輩!
「今日も杏里先輩を待ってるの?」
放課後、昇降口の隅で杏里先輩を待っていたら北川君に声を掛られた。
最初の一週間は杏里先輩が私の教室まで迎えに来てもらったが、わざわざ四階まで迎えに来てもらうのが申し訳なさすぎて玄関で落ち合いましょうと提案したのだ。
「あ、はいっ、北川君は、部活?」
彼を見れなくて、肩から掛けている鞄を見ながら返す。
私は未だ杏里先輩以外の男性とは滑らかに言葉を発せない。
「そうだよ」
そう言って北川君は私の一メートル横に立った。
部活に行く気配をみせてくれなかった北川君に私はビクッとしてしまう。
だってもうすぐ……
「美桜、カフェに行こう」
そこに杏里先輩が来た。
あぁあ、来てしまったと私がひやひやし始めると北川君が杏里先輩を見た。
「二人はカフェに行くんですね」
北川君が笑顔で言う。
「そうだよ」
杏里先輩が笑顔で答える。
二人共、笑顔だけれど、微妙な空気が流れている気しかしない。
この二人、性格が本当に合わないようだ。