触れないで、杏里先輩!
「美桜も飲みなよ」

促されたが私は動けない。

だって杏里先輩、ストローを掴んだままでドリンクに近い距離のままなんだもん。

「これも治療の一環と思って」

その一言に杏里先輩がこうした理由が分かった。

確かにこの至近距離で異性と同じ物を飲めるようになれれば、気絶することも無くなるかもしれない。

心の中で自分のお尻をバチンっと叩く。

「が、頑張りますっ!」

「そんな肩に力入れずにリラックスして飲みなよ」

気合いを入れた私を見て杏里先輩はクスッと笑う。

私は緊張しながらも刺してあるストローを掴んだ。

目の前からの視線が落ち着かない。

でもこんなことでを躊躇っていたら、いつまで経っても私の体質は治ってくれないだろう。

杏里先輩をなるべく意識しないようにストローに焦点を合わせると、ゆっくりとだがストローに口を近付けていく。
< 162 / 239 >

この作品をシェア

pagetop