触れないで、杏里先輩!
口を付けると一気に吸い込んだ。

結局目を瞑ってしまった。

瞑ってしまったのはドキドキしたから。

朝と同じ香りがしたから。

杏里先輩の香り。

ゴクンと飲み込む。

苦しくて、ドキドキして、ストローから口を離した。


「かなり近い距離だったよ。凄い進歩」

目を薄っすら開けると杏里先輩は感嘆の声をあげた。

「どう?美味しい?」

小首を傾げて訊ねられた。

「お、美味しいです!」

緊張のせいで味が全く分からないが、首を縦にブンブン振った。

「あんまりこういう系飲まないけどたまには良いね」

再び躊躇なくストローに口をつける杏里先輩。

私とは正反対。

「杏里先輩は、ドキドキしないんですか?」

「え?」
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