触れないで、杏里先輩!
「いえいえ!だから「俺が来たいの」


合わせる必要はないと伝えようとしたら杏里先輩に強く遮られた。

そこまで言われたら私がとやかく言うことではないと思うことにした。

昨日も杏里先輩、北川君に何かされていないかとか、凄く心配してくれた。

杏里先輩は相当な心配性だ。


その時、強風が吹いた。

私の長い髪をブワッと巻き上げた。

「きゃあ」と思わず声を漏らしながら、右手は髪、左手はスカートを押さえた。

「今の風、凄かったな」

杏里先輩は髪型を整えている。

「そうですね……いたっ!」

同調して返そうとしたら頭に痛みを感じ、顔を顰めた。

原因はすぐ分かった。

目の前の杏里先輩の制服のボタンに、私の長い髪が十本程だろうか、巻き付いて引っかかっていたから。
先程の強風のせいだ。
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