触れないで、杏里先輩!
脳が混乱する中、ふと思った。

昨日のこと、聞きたい。

何で私の髪にキスをしたのか。

私は釦に絡まった髪から、視線を上げていく。


「昨日の荒療治が効いたね」


顔を見た瞬間、杏里先輩が言った。

その言葉に思った。

杏里先輩は私の男性恐怖症を治すためだけにやったこと。

髪にキスしたのも、そのため。


そう思うと、身体中の熱が一気に冷めた。

そして徐々に胸が苦しくなる。

自然と視線は地面へと向かった。

とりあえずもう髪が絡むのはごめんだ。

どうにかしよう。




「今日からどんな治療しようね」

誰も居ない私の教室に入ると杏里先輩が顎に手を添えながら言った。
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