触れないで、杏里先輩!
他愛もない話を二人はしていた。
私は花純先輩の覚悟が気になって、ずっと無言だった。
気付いたら、目の前には駅の改札口が見えていた。


「二人共、気をつけて」

杏里先輩がいつものように挨拶を投げたので、私は鞄に付いている定期の入ったパスケースを掴み、駅の改札口に入ろうとした。
すると何故か花純先輩が私の腕を掴んで引き止めた。

「美桜ちゃん、もう終わりにするから」

突然花純先輩が私の耳元で意味深なことを言うと私から遠ざかり、にこっと優しく私に微笑んだ。
どうしたのだろうと再び疑問符を頭上に浮かべると花純先輩は杏里先輩へと向いた。


「杏里君、聞いて欲しいことがあるの」

「どうした?」

杏里先輩も突然畏まった真剣な顔の花純先輩に疑問を感じたような表情をしている。


「杏里君、私ずっと杏里君だけが好きです」

突然花純先輩が杏里先輩に向かって堂々と告白した。

私は目を見開いた。
視界にいる杏里先輩も。
花純先輩は真剣な顔のまま杏里先輩を見据えている。
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