触れないで、杏里先輩!
「それは、美桜が勘違いさせたくない相手が出来たってこと?」

私が勘違いさせたくないのは杏里先輩です。
でもそんなことは絶対言えないけれど。
だって私には花純先輩みたいにぶつかって振られる勇気は無い。

「……はい。だから杏里先輩もこういうことは好きな人として下さい」

俯いたまま返すと数秒沈黙が流れた。


「……そうだね。そうした方が良いね」

暫くして了承してくれた。
心から安堵し、ホッと息を吐いた。


「美桜、最後に触れさせて」


だが、まさかの言葉がすぐに聞こえてきて、思わず顔を上げて杏里先輩を見た。

先輩は真剣な顔をしていた。


「触れさせてくれたら、もう二度と言わないから」


この台詞、始まりの時と似ている。

触れたら、気絶してしまう……。

でもそうした方が良いのかもしれない。


もう終わりにしよう。

この恋心を。
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