触れないで、杏里先輩!
「だから対人恐怖症ってわけじゃないよね」

この人、いつまで喋り続けるのだろう。
いい加減黙って欲しい。
私が震え続けているの、気付いてるでしょ?

「……もしかして美桜って、男が苦手だったり?」

杏里先輩の核心をついた言葉に、私は肩を大きくびくつかせてしまう。

身体は益々震える。


「わ、分かったなら、もう絶対に触らないでっ!出てってっ!」

私は震えが治まるように両腕を抱き締めて俯きながら叫んだ。

すると杏里先輩は静かになった。

物音を拾うために耳を澄ます。
杏里先輩が出ていくのを確認するために。

でも音が聞こえてくれない。
静寂しかない。
出ていってくれない。
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