触れないで、杏里先輩!
何なの、この人……物凄くしつこい。

理由は、言いたくない……。

だって、今まで誰にも言えなかった。

両親にすら話せなかった。

怖くて、恥ずかしくて……。

でも、この人は、面倒だ。

鬱陶しい程に。

……でも、言えば、本当に消えてくれるの?


「……理由を言ったら、私の前から絶対に消えて下さい」

私は既に震えている唇を何とか開いて告げた。

「分かった。教えて?」

その答えを聞いて、膝の上に置いてある両手の拳を強く握り、覚悟を決めた。

初めて誰かに話す、私の秘密だ。
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