触れないで、杏里先輩!
亜季ちゃんは私のように膝までのスカート丈、髪の長さだけは私と違って肩にもついてはいないけれど、私に似た長めの前髪だ。
確かにこれらは地味子の象徴かもしれない。

「私のような地味子があの世界に入るなんて恐れ多い!」

亜季ちゃんは両手と首を横に振って卑屈なことを声高々に言う。

私達は自らキラキラする中に入る気は無い。
静かで穏やかな日常が好き。

そんな同じ価値観を持っている私達は自然と仲良くなったのだ。

「私は二次元と杏里先輩を見て、妄想して、楽しめれば良いの」

そう言いながら私の前に差し出したのは、タイトルは勿論知っているが見たことの無い表紙絵と十九巻の文字に私はハッとする。

「今日最新刊出たよ。コンビニで朝買ってきちゃった」

口元を上げてニヤリと笑ってみせた亜季ちゃん。
それはやはり人気恋愛少女漫画で私達が今ドハマリしている漫画の最新刊。

「今日発売したの!?私も帰りに買って帰る!」
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