触れないで、杏里先輩!
「俺、本気って言ったじゃん」

笑顔も男の杏里先輩も見たくなくて、私は逃げるように机に視線を動かした。

「美桜、立ち止まってても損にしかならないよ?」

貴方、かなり簡単にズバッと言うよね。
他人事だからって。


「……杏里先輩に私の気持ちは分からない!分かったようなこと、言わないで!」

苛々した私は目一杯大声で拒絶した。

だが私は忘れていた。

今は放課で、此処が教室だってこと。
そして私が話しているのは学園の王子だってことを。

教室は人なんて居ないんじゃないかってくらい、シンと静まり返った。

でも今の私は感情が高ぶっていて、更には自分にも一杯一杯で、そんな状況にも気付けていなかった。


「俺ね、ハーフなことがコンプレックスだったんだ」

そこに脈絡もなく、杏里先輩が言った。
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