触れないで、杏里先輩!
「最初は何を言われてるか分からなかった。でも日本語が喋れないけど、バカにされてるのは幼いなりにも分かった。悔しくて必死に日本語を勉強した。いつか日本語で言い返してやるってね」

皆にチヤホヤされてキラキラしている杏里先輩でも苦労していたのだと知ると、先程心の中で悪態をついたちっぽけな自分を激しく悔いた。

きっと笑顔で話せるのは過去の事だと割りきっているからだろう。
私みたいに抱え込んでいなくて良かったと思った。


「だからウジウジしてても何も生まない。時間が勿体無い。それに自分は悪くないのに相手に負けてる気がしてムカつかない?」

真剣な顔の杏里先輩。

杏里先輩が何を伝えたいか分かった。

分かったけれど……私には杏里先輩程の勇気もハングリー精神もない。


「まぁ良いや。美桜、まずはさ、背筋伸ばして前を見よ。ずっと下向いてるから」

「え?」

言われて気付いた。
いつの間にか私は俯いていた。
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