触れないで、杏里先輩!
私は防護壁その一を手で探す。
だが探っても、先程まであったところに髪の感触は無い。
眉の上にまで無い。

机にもう一度向く。
先程落ちたのはやはり私の防護壁。

私の顔は一瞬で青くなる。


「切ったんですか!?」

顔を上げて問い質す。

「うん」

にこやかに返されて、私は益々青くなる。

「前髪返して!」

「切っちゃったから返せるわけないじゃん」

口元に手を当ててプッと噴き出すと笑顔であっけらかんと言う先輩。

ショックすぎて、目眩が襲ってきた。
だって三年以上、私を守ってくれていた前髪が突然無くなったんだもの。
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