触れないで、杏里先輩!
「美桜、ごめんね?」

杏里先輩は眉を下げてはいるが、顔は笑っている。

謝る気、ゼロでしょ!

「謝るならやらないで下さいよ!」

「でもさ、まずはその隠れ蓑を失くすところからかなって思ったから。あ、ガタガタだから揃えてあげるね」

そう言って腰を持ち上げ、私にハサミを近付けてくる杏里先輩。


こ、怖いっ!


どんどん近付いてくる杏里先輩の指に、恐怖しか感じなくて身体が硬直する。


「や、やだっ!触れないでっ!」


必死に拒絶すると、触れる直前でピタリと止まってくれた杏里先輩。


「まだハードル高いか。また気絶されたら大変だし……」

フゥと短く息を吐くと、教室を見渡した杏里先輩。

「あ、居た、美桜のお友達。君、名前は?」

どうやら私の相棒の亜季ちゃんを探していたらしい。
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