触れないで、杏里先輩!
「永澤亜季ですっ!」

亜季ちゃんは杏里先輩に声を掛けられて興奮しすぎて震えている。

「亜季ちゃん、美桜の前髪を揃えてあげてくれる?あとゴミ箱も欲しいな」

「杏里先輩に亜季ちゃんって呼ばれちゃったぁ!仰せのままにっ!」

呼ばれた亜季ちゃんは悶えながらゴミ箱まで走る。
それを掴むと、ご主人様の帰りを待っていたペットかのようにこちらに笑顔で向かってきた。

ヨカッタデスネ、亜季ちゃん。
私は心の中で棒読み。

亜季ちゃん、教室に居たんだ。
こっちに来なかったからトイレにでも行っているのかと思っていた。

居たなら助けてよ!

その亜季ちゃんは私の前に来ると、何故か私の顔をじっと見つめながら、ぽかんとしているように目と口を開けた。

「亜季ちゃん?どうしたの?」

その反応が不思議に思い、私は訊ねた。
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