触れないで、杏里先輩!
言われて気付いた。

私、今、杏里先輩を怖いと思っていない。

亜季ちゃんみたいに喋れている。


「その気絶する体質だけは改善しないと苦労するよ。それは美桜も思うでしょ?逃げてても意味が無いよ」

そう言われて、私は漸く小さくだが頷いた。

素直になれたのは昔馴染みだというのと、それに私も同意見だから。

避けて逃げ続けていたら、こうなってしまった。

他人と極力会話しない教室の隅に居る地味子に。

あの日から男性の視線が怖い。

中学に上がると同じくらいの背丈の男子達がどんどん大きくなって、声変わりをしていって、益々怖くなった。

そのせいで目立つことを止めた。
必然と目立たない服装を着るきるようになって、スカートは制服以外着れないし、三年以上買っていない。
キャミソールや水着はもってのほか。
目を隠す前髪を切る勇気も無かった。

ずっと隠れて生きていた。
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