触れないで、杏里先輩!
電車に乗る時も、道を歩いている時もそう。

下を向いて、逃げ続けている私。


……このままで、 良いわけ無い。


だって本当は、オシャレもしたい。

だって本当は、こんな隠れっぱなしの自分を変えたい。

だって本当は、男性にビクビクして縮こまり続ける人生はもう……嫌だ。


この機会を逃したら、私はずっと私は俯いたままの人生かもしれない。

私が今日の朝、寝坊したのは杏里先輩に出会うためだったかもしれない。

そうとまで思えてきた。

杏里先輩の言葉が今度は私の弱りきった心をグッと押してくれたようだ。

私は小さくだが頷けたから。

勇気の一歩を踏み出せたから。
< 73 / 239 >

この作品をシェア

pagetop