触れないで、杏里先輩!
「とりあえずランチを食べよう。美桜、座って」

杏里先輩に座っている廊下の床をポンポンと叩きながら言われ、私は固まる。

此所は誰も来ない階段。
幅二メートル程の階段の真ん中辺りに杏里先輩は座っている。

確かに杏里先輩に少しは怖さを感じなくなった。
でも隣に座ったらかなりの至近距離だ。


「触れないから、座って」

躊躇していたら、杏里先輩が先程よりも優しいトーンで言った。

杏里先輩は私のために自分の時間を割いている。

私だってこの男性恐怖症を治したい。

自分でも頑張らないと……っ!


私は心を決めて、持っていたお弁当袋をぎゅっと抱き締めながらゆっくりとだが杏里先輩の隣に座った。

だが座れたのは、壁に背中をペタリとくっついて限界まで端っこ。
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