愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「おはようございます」

「先にシャワー浴びてくる」

 言わなくても毎朝シャワーを浴びるくらいは知ってますよと思うけれど、「はい」と微笑んだ。

 離婚を撤回する気持ちは全くないとはいえ、嫌な思いはしたくないもの。

 私は朗らかでいるよう気を配る。
 自分のために。


 味噌汁を口にすると綾星さんは満足そうに頬を上げる。

「君は本当に料理が上手だよね。透を連れてくると君の手料理が食べられるのがうれしかった」

 そう言われてもなんて答えていいのか。

 だったらひと言、その時に言ってくれたらよかったのに。秘書さん手作りのおにぎりやサンドイッチを食べていないで。

 顔で笑って心でむっとする。
「料理教室も通いましたから」

「そうなんだ。他には? どんなことを習ったんだ?」

「語学、ピアノ、茶道、華道、書道、合気道、キックボクシングまぁ色々です」

 綾星さんは心から感心したように、「へえー」と口を開ける。
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