愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「それなら例えば、中山道の宿場を巡り歩く旅とかどうですか? 妻籠宿とか馬籠宿とか。プチトレッキング」

「なにそれ! すっごく楽しそうじゃないか」

 あら、意外。綾星さんって沖縄でゴルフとか北海道の大草原を望む高級ホテルとかそういうのが好きなんじゃないのと思っていたのに。

「金沢あたりで蟹を食べながら温泉でのんびりとか」
「あー、それもいいなぁ」

「姫路城とか」
「おおー、行ってみたい」

 なによ、なんでもいいんじゃないの。
 真面目に受け取って損したわ。

「星光、俺ほんとにどれも行ってみたい。全部一気には無理だから、最初は中山道の宿場巡りかな、うん。頼むよ」

「舗装されていない山道を歩きますよ? 疲れちゃうかもしれませんよ?」

「いい。それでもいい。それで蕎麦とか食べるんだろ? きっとものすごくうまいんだろうなぁ」

 さあ飲んでとグラスを持ってきて、私にもワインを注ぐ。

 私は飲酒の習慣はないんですけどね。まあ非日常のひと月くらいはお付き合いしますけど。

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